ねばちっこい経営 粘り強い「人と組織」をつくる技術

ねばちっこい経営 粘り強い「人と組織」をつくる技術

ねばちっこい経営 粘り強い「人と組織」をつくる技術


ローランド・ベルガー日本法人会長の遠藤功さんの著書です。「現場力を鍛える」「見える化」に続く3部作の最後の締めくくりにあたります。
粘り強く続けるという非常に当たり前ながらなかなかできていない実態について、実際の企業における成功/失敗事例を紹介しています。たとえばトヨタ花王ですね。そうした企業がなぜ続けられるのか、続けられない企業とどこが違うのかをイチローや納豆を例に挙げつつ平易に解説しています。脊髄反射的な域まで高めてこそ、ほんとに実践していることになるのでしょうね。そして、周囲に「粘り」を感染させる納豆菌人材のあり方にも言及しています。
個人であれ組織であれ、「粘る」ためにはある種の覚悟と日々の研鑽が必須だと思います。

「変化に対応すること」と「必要なことを地道に粘り強く継続しながら進化させること」というのは、決して相容れないものではない。変化に対応しなければならないからこそ、続ける力、粘る力が必要となる。
(中略)
「変化対応」に成功している企業や個人をよく見ると、じつはその裏で、地道にコツコツと見えない努力を積み上げている。「常」なくして「変」はないのだ。

トヨタでは「『五回のなぜ』を繰り返せ」が習慣化しているが、これはまさに「思考の粘着力」を鍛えるためのものである。
(中略)
「なぜこの仕事をやっているのか」
「なぜこのやりかたなのか」
そんな根本的な問題意識から「なぜ」を繰り返すことによって、思考回路が回りはじめ、いろいろな気づきや発想が生まれる。

ホテルの日常的な運営は、放っておくと単調なルーティンの繰り返しになりがちだ。しかし、「そうした地味な裏方仕事にこそ、自分の感性を磨くチャンスがあるのだ」とリッツ・カールトンでは考えられている。
(中略)
ベッドのシーツを替える仕事でも、意識の高い人は、毎日のシーツ交換を通じて、織り方や糸の太さの違いがわかるようになるという。「お客様にとって心地よいシーツとは何か」を常に考え、その仕事を通じて磨かれた意識や感性が、シーツを仕入れる際に活きてくるのだという。
仕事がつまらないのは、業務が単調だからではない。自分の感性が低く、意識が単調だからつまらないのだ。

シャープの商品開発力は、デバイス部門と商品部門が互いに連携しあい、各々の開発目標を高めて挑戦しあう「スパイラル戦略」が組織に根付いていることから生まれている。
(中略)
最初の液晶開発は、消費電力の少ない電卓の表示装置を求める「商品部門」側のニーズからスタートした。その要請を受けた「デバイス部門」は、伝記の要らない液晶に着目し、研究を進め、液晶電卓に結実した。
次に、「液晶で文字を表示したい」というニーズが「商品部門」から出された。それを受けた「デバイス部門」は、ドット表示可能な液晶デバイスを開発し、持ち運べるワープロが生まれた。
...

「たった一本のヒットが欲しい」
イチローのこの言葉が、持続力、粘着力のすべてを言い表している。一本一本のヒットから「喜び」や「嬉しさ」を感じる。そうした素直でおごりのない心がある限り、組織であっても個人であっても、粘り強い取り組みが途絶えることはない。

現場力を鍛える 「強い現場」をつくる7つの条件

現場力を鍛える 「強い現場」をつくる7つの条件


見える化-強い企業をつくる「見える」仕組み

見える化-強い企業をつくる「見える」仕組み