組織を強くする技術の伝え方

組織を強くする技術の伝え方 (講談社現代新書)

組織を強くする技術の伝え方 (講談社現代新書)


「失敗学のすすめ」でお馴染みの畑村先生の著書です。
技術に限らず、コミュニケーションを円滑にとるためには相手の立場、目線に立つことが大事だと思ってはいますが、自戒を込めて...

技術というのは本来、「伝えるもの」ではなく「伝わるもの」なのです。結果として相手の頭の中に伝えたい内容を出来させることができなければ意味がないし、そうでなくては伝えたことになりません。このとき伝える側が最も力を注ぐべきことは、伝える側の立場で考えた「伝える方法」を充実させることではありません。本当に大切なのは、伝えられる相手の側の立場で考えた「伝わる状態」をいかにつくるかなのです。

一般の事故事例集の多くは、失敗を「原因」と「結果」の二つに分けて考えています。(中略)
じつは原因と結果の間には、必ず人間の行動があります。すべての失敗はヒューマンエラー、すなわち人間が主因となって起こるのです。ですから失敗にいたるシナリオを考える際は、必ず原因、行動、結果の三つを最低限検討しなくてはいけないのです。

技術を伝える現場で、伝達者が犯しやすい間違いとは、「わかりやすいためには客観的でなくてはいけない」と思うあまり、話自体を整理しすぎてつまらないものにして、結果として伝わらないものにしてしまうことです。

せっかく教育を行っても、他の人に何も伝わらなければその人たちは孤立してしまうかもしれません。そこで組織内に畑村塾の考えを行き渡らせる方法として、参加者が今度は講師になって他の社員を教えるという、言葉は悪いですが、いわばネズミ講のような育成を行っているわけです。(中略)
中身が私が伝えたのと違ったものになる危険性もありますが、そこは二十人を対象としたセミナーに孫ネズミやひ孫ネズミも見学者として参加できるようにすることでフィードバックをかけています。

多くの組織では、そのテーマについて場に参加する前に本気で考えてくるのは、資料をつくったひとりないしふたりであることが多いのです。そしてミーティングの席ではじめて説明してみんなで考えましょうということでは、はっきり言って時間のムダですし、結果としてできあがる共有知のレベルもそれほど高いものにはなりません。


最後に書かれているラブレターの例が秀逸かも(笑)