流星ワゴン

流星ワゴン (講談社文庫)

流星ワゴン (講談社文庫)


「もう、死んじゃってもいいかなぁ..」、そんな気持ちでいた38歳の主人公のもとに、5年前に交通事故死した父子の乗る不思議なワゴンがあらわれます。そのワゴンに拾われて連れて行かれた先は、人生の岐路となった場所。そして、そこに登場する自分と同い年の父親...

ありがちなタイムスリップものと違って、過去の選択を変えてもそれが現実に反映されることはありません。現実の世界を変えることは叶わず、ひどい「いま」のままであることは父子から伝えられます。それでも、ワゴンの父子、過去の世界での家族とのやりとり、そして長年確執の続いていた父親とのやりとりを通じて、主人公のなかで何かが変わっていきます。


物語には3組の親子が登場します。交通事故死した父子、主人公とその息子、そして主人公とその父親(ただし、同い年)。三者三様の問題を抱えつつも、いずれにも共通しているのは大きな後悔の想い。その想いに導かれるまま物語は進みます。

信じることや夢見ることは、未来を持っているひとだけの特権だった。信じていたものに裏切られたり、夢が破れたりすることすら、未来を断ち切られたひとから見れば、それは間違いなく幸福なのだった。

チュウさんに肩車された健太くんは、背中をピンと伸ばして、気持ちよさそうにあたりを見まわした。
幼い頃の僕が、そこにいる。父に肩車されているときの僕は、おとなになった僕よりも、ずっと背が高かった。いまの僕には見えないものも見えていたのかもしれない。