JavaからRubyへ ―マネージャのための実践移行ガイド

JavaからRubyへ ―マネージャのための実践移行ガイド

JavaからRubyへ ―マネージャのための実践移行ガイド

角谷さんから献本いただきました。ありがとうございます。
発売予定日が早まり、すでに店頭でも平積みされていますのでかなり出遅れ感がありますが... (^^;
デブサミでの告知を聞いて以来、手にできる日を楽しみにしていました♪


去年あたりには同じく Bruce A.Tate の『Beyond Java』を気長に読んでいましたが、やはり日本語に訳されているとすんなり頭に入ってきますね。

自分も 5ページにわたる訳者あとがきから先に読んでしまった口ですが、あえて苦言を呈すればもっと書いて欲しかったです。きっと、Ruby 推進にあたってのいろんな苦労話をもっていて、それこそが読者の興味の対象でもあると思いますので。50ページくらいあってもよかったのかも(笑)


  • 序章より

JavaRuby のどちらを選ぶのかを決断するためには、Ruby ならどれくらい費用を節約できて、どれくらい顧客のニーズにより的確に応えられるようになるかを理解しなければなりません。
本書はこの開発者とマネージャの間に横たわる「空白地帯」を埋めます。...


正しい道を「素早く」通り抜けるためには、イテレーションを活用した反復的な改善を早くまわすのがひとつの解決策だと思います。ユーザーの要求をがんばって見越すよりは、さっさとつくって実際に触ってもらってフィードバックを得たほうが多くの場合はよい結果が残せるでしょう。となると、いかに立ち上がりを素早くできるかがポイントです。RubyRails の生産性はそれを可能にします。もちろん著者自身が述べているように適材適所でテクノロジーを選択するのは当然ですが、単に食わず嫌いで選択肢からはずしてしまっていたならもったいない限りです。


生産性の高さは、同じくらいの小(中)規模なプロジェクトで必要となる開発者の数にも影響を与えます。『人月の神話』をはじめとして何十年も前から語られてきたことですが、コミュニケーションのコストは人数が増えるにしたがって単なる比例以上に大きくなります。大きなプロジェクトをどううまく進めていくかはまだまだ難しい問題ですが、10人以上で開発するよりは 5人程度で開発できるほうが幸せですよね。マネージメントするのも楽でしょうし。


さらに本書では、技術的なリスクと政治的なリスクで分類した Ruby を採用するにいたるまでのシナリオや、Ruby のもつ優れた文法、Webアプリケーションを開発する上での強力なライブラリを紹介したのち、Java をはじめとした他言語で実装されたアプリケーションとの統合についても紹介しています。
(そのうちこのあたりで AP4R のような軽量メッセージングによる解決策なんかも登場すると嬉しいなぁと勝手に妄想...)


最後に Ruby のさらなる普及に向けて採用や教育にも触れています。ペアプロSVN のコミットログレビューなんかは最近自分たちもやっていたので効果に納得です。また、採用リスクを低減するためのいくつかのアイデアも述べられています。


Ruby の採用を検討している方にとっては、そのメリットから導入方法、代表的なライブラリ、注意すべきリスクにまで扱っていてとても網羅的です。対象とする領域や規模に応じてよく検討しなければいけないことはまだまだあるでしょうが、ひとつの指針として本書は有用だと思います。Ruby のよさの伝え方のヒントにもなりますしね。


それにしても豪華なインタビュー/コラムがたくさん載ってます!

  • Martin Fowler 「Java に何が起きたのか?」
  • Stuart Halloway 「なぜ Ruby が素晴らしい言語なのか?」
  • Henri ter Steeg 「救出シナリオ」
  • Joshua Haberman 「Ruby の導入」
  • Thomas E.Enebo 「実用的なアプリケーションとしての JRuby
  • Charles O.Nutter 「JRuby の内側から」
  • Jamis Buck 「Ruby をデプロイする」
  • David Heinemeier Hansson 「コミュニティの役割」
  • 角谷信太郎 「訳者あとがき」